流転工房

シンギュラリティをこの目に

『柳井正 成功は一日で捨て去れ』 再ベンチャー化、グローバル化のユニクロ話。


2009年10月刊行。巻末年表でも2009年10月までの歴史が語られてる。

減益予想や中国ビジネス、猛暑と、自然や政治で苦戦しているのはその一年後。ひとり勝ちと讃えられるユニクロ方式も今は(株価的に)冴えない。

とはいえ、アパレル業界で異彩を放ち続けていたユニクロトップの言は、本書からじっくり読み取ることが出来きて面白い。


柳井正氏のいう成長とは。。


「あらゆる者が、強みによって報酬を手にする。弱みによってではない。

 したがって、つねに最初に問うべきは、『われわれの強みとは何か』である。」

 弱いところを何とかしようと努力しても、時間ばかりかかって労力のわりに成果は上がらない。それなら弱い部分は無視して、自分たちの強い部分を活かした経営をしたほうがよい。

 不思議なことに長所を伸ばしていくと、欠点というのはどんどん消えていく。人間は長所を褒められると、欠点をカバーしようという気持ちが自然に芽生えるが、それは起業にも同じことが言える。

 企業の優れた部分をより強固にしようとすると、欠点はやがて隠れて見えなくなるものだ。

こうした攻めの成長への意識、ハングリーさ、そして以下のようなユニークさは、やはり一世風靡の人間らしさを感じてしまう。。


 業界内の一般的な考え方によれば、服の需要がこれだけあるとしたら、それを業界内の人たちでいかに奪い合うか、その限られた市場を中心にして考える。洋服に敵対する商品は洋服しか思い浮かばない。それでは同じ狭い市場の中の同じ財布の奪い合いになってしまう。

 ぼくはそんなことではなくて、例えば携帯電話を敵と捉えれば、それよりもっと魅力があって買いたくなるような洋服とはどんな商品なのかを考える。市場をもっと幅広く見ているので、そこのところの違いだと思う。


洋服 vs 携帯は面白いけど、自身の市場内にとらわれない目線は凄みのひとつ。グローバル市場の先達に学ぶことは多くありそうだ。。


あと興味深いのが、エフアール・フーズによる野菜果物販売事業の失敗について。

結果として、20数億円の経費を費やして失敗に終わったとしているが、なぜか。

著者はユニクロ方式は、「繊維製品を自分たちで作って自分たちの手で売っているということが強み」という。

農業の世界では、生産計画も立てづらく規制も多すぎて「自分たちで作って」という点が通じなかったとか。ユニクロ方式の「強み」が生きる事業分野でないと優れた方式でも失敗に終わるという例は興味深い。。