流転工房

シンギュラリティをこの目に

アメリカの高校生が読んでいる起業の教科書(山岡道男他)読了、、心理報酬とか限界分析とか。


アメリカの学生向け経済学の指導要領「Voluntary National Content Standards in Economics」の作成団体「CEE(アメリカ経済教育協議会)」と協力している著者の日本向け仮想授業プラン、、ということでタイトル通りのアメリカの教科書の翻訳ではない。

とはいえ分かりやすさやツボの押さえどころは抜群で面白い。

消費者がモノを買う決め手となった動機を考察する頁で、「笑顔の素敵な店員さんがいて、その人に会えるという喜び(心理報酬)」を求めて、コスト(取引費用というモノを買うまでのバス代等の費用)がかかっても、遠出して買う可能性があるそうな。

こうした市場メカニズム以外の、消費者の目に見えぬ考えも研究対象なんだなぁ。


そして限界分析(Marginal analysis)。

ビジネスの成功のための価格設定のヒントがたっぷりと込められている。

  1. 限界生産物(Marginal product).. 生産物の増加はどれくらいか
  2. 限界費用(Marginal cost) .. かかる費用はどれくらい増えるか
  3. 限界収入(Marginal revenue) .. 得られる収入はどれくらい増えるか


この3つのバランスを取らないと、かえって収入が減る収穫逓減の法則に引っかかるという。(労働者が多すぎても、生産量の伸びが減って人件費が増えるから赤字になる)


なるほど、、いわゆる損益分岐点の考慮にもつながるのだけど、こうして体系立てて整理したことはまったくなかった。


「労働者数」「生産量」「1個当り費用」「総費用/収入」「限界収入」を整理し、「利潤(総収入−総費用)」を求めていくプロセスは価格設定の妙があって、本書の最も興味深いところ。掘り下げれば、常に以下のイノベーションが必要になる。


  1. Planning .. 事業計画を見直す
  2. Organizing .. 組み合わせを見直す
  3. Staffing .. スタッフ編成を見直す
  4. Controlling .. 指示系統を見直す


その他、財務諸表や投資/融資の違い、フランチャイズ等が丁寧に解説されている。この「アメリカの高校生が読んでいる」シリーズは、全部読んでみよう。