流転工房

シンギュラリティをこの目に

『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』新たな地盤でロングテールを狙う。



 最初にデシは、ボランティアで実験に参加した大学生たちにパズルを解かせた。それが十分に面白いものなら、自由時間でもパズルをやり続ける学生がかなりいた。

 次に、解いたパズルの個数に合わせて報酬を支払うことにした。すると学生たちは、自由時間には雑誌を読んだりして休憩するようになった。お金は課題に取り組むモチベーションを高めるのではなく、失わせたのだ。

 パズルを解くのは、それが面白いからだ。ところが金銭的報酬を支払われると、パズルを解くことが仕事になってしまう。その結果、ゲームのルールが変わって、本来の「面白さ」がどこかに消えてしまうのだ。


橘玲の新作。

稼がなければ死んでしまう残酷な世界で、「生き延びて」「社会に参加して」「楽しむ」ために。。

序章から人の能力は遺伝的(伸ばせない)、自分は変えられない等々、「自己啓発」に懐疑が入っていて、話題になっている本だけど、それでも能力主義のフェアさを尊重し、「残酷」なルールの中で戦う方法を探している。。


本書はいろいろな視点、事例が使われるので道に迷いまくったけど、「たったひとつの方法」とは、稼ぐカタチを自分で作り、ロングテールの中のショートヘッドを狙えということらしい。


先の「自己啓発」による無限の可能性を信じて、結果を出せず、疲れ果て、迷うよりは、、ということなのだろうか。


これは冒頭の引用が面白い。

自己啓発には、「成長を楽しむ(幻想であっても)」側面があるのは間違いない。ただし、社会的承認という成功や金銭的報酬という結果を得るのが自己啓発のルールなのだから、そこを取り違えてはいけないと。

例えば、社会人で専門学校や大学に通う場合、そこで支払った学費を回収する目処が立たないのは、ひとつのバクチということだろう。思い切りが大切なのは間違いないけど、その裏でクレバーな計算は必要と。


自分にとっては複雑な本だった。。

ただ自分の参加しているゲームのルールを取り違えていないか、という視点は改めて気付かさせるものがあったと思う。