流転工房

シンギュラリティをこの目に

2010年の基盤

2010/08/10

月をめざした二人の科学者(的川泰宣)再読、、第二宇宙速度を生み出した「悪魔」の仕事。

 

1930年代はロケット・ブームに沸きたっていたという。 そんな中、ドイツの若きフォン・ブラウンは、ナチスドイツの弾道ミサイル技術(A-4、のちのV-2ロケット)への協力を惜しまなかった。。

私の宇宙への夢は、人道的な立場からロケットの研究を中止するには、あまりにも強かった。

その頃の私は、宇宙旅行の実現に向かって大きく前進できるならば、悪魔に心を渡してもよいとさえ思っていたのです。

本書はそんな「悪魔」に憑かれたような男たちの仕事の記録。 「二人の科学者」とは、フォン・ブラウンコロリョフの物語なのだけど、フォン・ブラウンのような天才の上司だった、ジェームズ・ウェッブNASA2代目長官の仕事にはいろいろと教わった。。

ウェッブは、副大統領、軍、経済界などを介さないで、大統領と直接コンタクトを取りながら仕事をすることを望んだ。

彼の就任の2年前に、有人宇宙飛行が公式にNASAの任務とされており、それをもっとも効率よく推進することを決意した。

ウェッブの就任直後の働き方は、見事なマネジメントの典型である。

まず自分の意見を述べることはせずに、ヒアリング、質問、勉強、議論を徹底して行った。

次にNASAの職員、それぞれの局、委員会、パネル、関係機関がこれから彼をサポートしてくれるよう態勢を整えた。

第三に、有人飛行に関して提出されたさまざまな計画に優先順位をつけた。

第四に、実行したい計画と実行可能な計画の間の妥協点を定めて、自分の心のなかにしっかりとした行動のプランを作り上げた。

最後に、その行動プランを大統領に提出した。

まさにマネージャーの鑑。

 

また、夢の実現の為、予算のつく国家での仕事を選ぶフォン・ブラウンのあり方にどうしようもないくらい強い意思を感じるし、逆境であってもエンジニアの仕事をしている様には尊敬の念を抑えられない。。

驚くべきことに、この頃のフォン・ブラウンの口から不平不満の言葉を聞いた人は誰もいない。

「抜け出せる見通しのない事柄について、愚痴をこぼして時間を浪費したくない」というのが、フォン・ブラウンのモットーであり、信念であった。

教育プログラムの重要性を説く。

「お腹のすいた人にサカナをあげれば、その人を1日だけ救うことができる。しかし、その人にサカナのとり方を教えてあげれば、一生お腹がすくことはないだろう」

宇宙へ、宇宙へ人を、のプロジェクトのさなかには、巨人たちがいたことを感じさせる良本。

 

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